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宇治特集 萬福寺と塔頭めぐり スキマ情報

黄檗公園・旧陸軍火薬庫の土塁とトンネル

 萬福寺付近の黄檗公園の一帯には、かつて旧陸軍の火薬庫があったそうです。
黄檗公園
黄檗公園

聖林院


大駐車場から萬福寺へと向かう途中に、聖林院という塔頭がありました。
門前に「願掛け みみづく地蔵尊」が安置されています。

聖林院
聖林院

瑞光院

黄檗 瑞光院この塔頭では、蓮の実が入ったゼリー「荷葉露(かようろ)」を売っています。
萬福寺内の売店にもありました。
甘さ控えめ、とてもあっさりとした味で、実は百合根に似た触感でした。

看門寮

やっと門を潜れたところで、
ガイドさん:「右手にあるのが「看門寮」といいます。宇治の地は奈良から山城・近江・北陸への交通の要衝であり、萬福寺はお殿様が各地へ出向く際の宿泊所、つまり「城」の様な存在だったと思います。この「看門寮」には、見張りが控えていました」

ガイドさん:「反対側の向こうには南山があり、宇治陵には藤原道長たちのお墓があります。どれが本人のものかは分からないそうですが…」

参道の敷石

境内の奥へと導く参道に敷かれた菱形の石盤は、龍の鱗。
私達は、龍の背を歩いているのでしょうか。

放生池

黄檗 瑞光院 放生池右手に放生池が見えてきました。龍の心臓に当たる部分です。
6月の7・8日は、放生池に蛍を放つ「蛍放生会」が行われます。黄檗宗の声明を聴く事ができる機会でもあります。
昔、南座で大原の天台声明と黄檗声明を聴いた事がありましたが、厳粛な前者に対して、黄檗宗のそれはダイナミックで大陸的な印象を受けました。
 

この付近では近年庭が整備され、枝垂れ桜等の四季折々の植物を植えられました。

禁牌石(きんぱいせき)

黄檗 瑞光院  禁牌石三門の手前にあるこの石柱の言葉。
ガイドさん:「ここから先へは、臭いの付くもの(精の付くもの)を持って入らないこと、という意味です」
前日にニンニクを食べた人は門前払い!?

三門

黄檗 瑞光院  三門萬福寺では「山門」ではなく、「三門」と呼びます。
空門・無相門・無願門の三つの境地を経て、仏国土へと至る門、「三解脱門」を表すといわれています。
禁牌石と共に、ここから先が聖域である事を示す結界であり、入門する者の心得を説いているようです。
寺院建築は、その造形でもって私達のこころのあり方を語りかけてくるのですね。

左右対称、回廊が巡らされ、雨にも濡れずに移動できる伽藍形式も中国の影響を受けているといいます。
ガイドさん:「なぜだかは分かりませんが、萬福寺境内の階段の段数は殆どが奇数になっているんですよ。」

天王殿

正面の天王殿に座っている布袋さんの像は、その太鼓腹が福々しく金色に輝いていて、離れた場所から見ても存在感たっぷり。
周囲の四天王が、それぞれ東西南北の方角を守護しています。

ガイドさん:「この布袋さん、実は弥勒菩薩の化身と言われていて、あの広隆寺の弥勒菩薩像と同じなんですよ。」
えっ、あのスリムな弥勒菩薩像とはずいぶん体型が違いますが…。

ガイドさん:「弥勒菩薩は釈迦の弟子で、釈迦の入滅後から56億7千年後に現れ、釈迦の救済から漏れた者を救って下さるそうです。」
その有り難い現場に立ち会えるよう、長生きできるといいな。

ガイドさん:「天王殿の四隅の柱は角柱で、敷石も四角なのに、2本だけ丸柱で敷石も丸くなっていますよね。黄檗七不思議の一つらしいです」
このドラえもんの足みたいな柱ですね。単なるデザインでは…とも思ってしまうのですが。

黄檗 瑞光院  韋駄天像先程の布袋さんの後ろに回ると、韋駄天像が現れました。
宝蔵院のものとは異なって、端正なお顔立ち。
足の早い韋駄天さま。境内で悪さを働く者がいても、すぐに捕まえてくれるというわけです。

文華殿

黄檗 瑞光院  文華殿右手に宝物館・文華殿へと続く道が見られましたが、また秋季特別展の期間中にお邪魔したいと思います。

回廊にはたくさんの灯籠が吊り下げられています。
「蛍放生会」の際には回廊中の灯籠が暗闇にぼんやりと灯り、異世界の迷宮のようになります。

売茶堂・有声軒

黄檗 瑞光院  売茶堂灯籠を良く見ると、「煎茶道」と書いてありますね。
この先には売茶堂・有声軒があり、全日本煎茶道連盟の本部としても使用されています。








黄檗 瑞光院  有声軒売茶翁(高遊外・月海元昭禅師)は煎茶道の祖とされ、絵師の伊藤若冲とも親交があった事で知られていますね。
煎茶道を体験してみたい人は、10月に行われる「月見の夕べ」に参加してみてはいかがでしょう?
ガイドさん:「茶道を体験できる宇治市営茶室「対鳳庵」でも、煎茶道の体験ができる日があったと思いますよ」

黄檗樹

黄檗 瑞光院 黄檗樹「黄檗」は「きはだ」とも読みます。
ミカン科で、花や内樹皮が黄色をしており、生薬の黄檗(おうばく)として知られ、染料の材料としても用いられます。

伽藍堂

鐘楼の奥にある伽藍堂。
ガイドさん:「伽藍堂に安置されている華光菩薩像は、日本ではここ以外に見られない、大変珍しいものだそうです」

斎堂

黄檗 瑞光院 開梛手前が雲版(うんばん)、奥に見える魚のようなものが開梛 (かいぱん)です。
萬福寺の見どころと言えばこれ。
これが萬福寺山内における時報を知らせるもので、木魚(龍)の原型である事を知っている人は多いはず。
でも何故、魚なのでしょう?

ガイドさん:「魚は(昼夜とも目を開いたまま)24時間眠らないと考えられ、この寺で修行をする雲水たちに、“睡眠は取っても良いが、心の目は休まないように”と戒めているそうです。」
目からうろこです!
ガイドさん:「くわえている球体は煩悩を表し、それを吐き出そうとしているんです」

黄檗 瑞光院 生飯台その傍らにあるのは「生飯台(さばだい)」。
斎堂には僧侶達の食堂があり、各人が少しだけ残したご飯を最後にかき集め、この台に乗せて衆生に施すためのもの。
中国風精進料理・普茶料理は萬福寺の中でも頂けます(予約制)。

大雄宝殿

黄檗 瑞光院 大雄宝殿 天井裏ここが本堂になります。
軍艦を造る際に用いられる堅いチーク材を使用した貴重な建築物。天井裏は「蛇腹天井」です。








黄檗 瑞光院 桃を彫った戸中国で魔除けとされる桃を彫った戸が。










黄檗 瑞光院 庭園ガイドさん:「法要の際、和尚さんはこの扉をバーン!と勢いよく開いて出て、邪気を祓うそうですよ」
大雄宝殿の前には白砂が美しい縞模様を描いています。
ガイドさん:「真ん中にある板は、このお寺の中心を表しているほか、掟を破った僧侶がここに座って坐禅を組む場所でもあります」

「説教部屋」ならぬ「説教板」…!?

お堂の中に入ると、本尊の釈迦如来坐像の周りに18体の羅漢像が。
普通は「十六羅漢」ですが、両脇侍に迦葉尊者、阿難尊者が安置されています。
羅漢さんの顔、日本の仏像とは全く違ってコミカルな印象。
中国の仏師が彫ったからですね。顔はどちらかというとインド人みたいですが…。

そのうちの一つ、羅怙羅尊者(らごらそんじゃ)は、釈尊の出家前の実の子。自ら腹を開いて仏性を見せているという、大変ユニークなお姿。お釈迦様って子供がいたんですね。
で、この仏性を表す小さな顔…奈良・平城遷都1300年祭のマスコット「せんとくん」に見えるのですが…。
須弥壇の上の額「真空」は明治天皇の直筆だそうです。

黄檗 瑞光院 飾り付けの一つ前回訪れた際には見かけなかったこれ。何でしょう?

ガイドさん:「10月半ばに行われる普度勝会(中国祭り)で登場する飾り付けの一つです。在日華僑の先祖を供養するお祭りで、獅子踊りもありますよ」
日本の禅寺とは対照的な煌びやかさですね。

法堂(はっとう)

黄檗 瑞光院 法堂卍くずしの匂欄(こうらん)は、萬福寺のトレードマークとも言えるでしょう。JR東海のポスターにも起用された事もある風景です。
ガイドさん:「天王殿の匂欄は×型になっています。これはラマ教に由来するそうですよ」

中和井(ちゅうわせい)

庭(中和園)に井戸が見えますね。
後水尾法皇の母・中和門院前子の屋敷址で使用されていたもの。
後水尾法皇や徳川家の援助によって萬福寺が創建される際に、近衛家の屋敷一帯の一部を移したものだそうです。日本の建造物って、リサイクルが多いですよね。

寿塔

黄檗 瑞光院 寿塔ガイドさん:「萬福寺の開祖・隠元大師のお墓だそうです。」

開山堂

黄檗 瑞光院 開山堂ガイドさん:「前の参道の、割れた氷のように見える石畳は、日本海を表しています。」
石畳、と一言でいってもさまざまですね。
取材当時、松隠堂は工事中でしたが、2008年12月には完了するとのことです。

再び、三門から出て行きます。
そばに田上菊舎が詠んだ句が刻まれていました。

「山門を 出れば日本ぞ 茶摘み唄」

今となっては住宅地の中ですが、まるで異国の世界に訪れたような境内から一歩外に出ると、目の前に広がる一面の茶畑。そのあちこちから茶摘み唄が聞こえてくる様が、思わず目に浮かんでくるようです。

古くから、中国を始め異国に対して憧れを抱き、その先進技術や文化を積極的に取り入れて、更に洗練を重ねて独自のものへと昇華させてきた日本。
異なるものに出会う事で、改めて己自身というものを知る。
ふと振り返ってみると、何気ないのどかな光景の中にも美しい自国の姿が息づいているのかもしれません。

一言コラム

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