襖の開閉の仕方 --どうして三回に分けて開けるの?
西洋の人々が日本人は木と紙でできた家に住んでいると聞いて驚いた、という話をかつて耳に
したことがあります。日本の襖の文化は、外国の人から見れば、あまりにも頼りないものに
見えるようです。以前アメリカの高校生がわが家に一か月ホームスティをしたことがありました。
初めて日本家屋に足を踏み 入れたその子に、鍵のかからない部屋を「貴方の部屋よ」と言って
渡したところけげんそうな顔をしたのを思い出します。
確かに襖一枚で部屋が仕切られているだけなのですから、彼女にとっては理解に苦しむ
部分だったのでしょう。旅館に泊まるときなど、襖で日本家屋の風情を堪能しながらゆったりとした
気持ちになるのですが、それは、日本の治安の良さからくる安心感があるからかもしれません。
事実、旅館で接待してくださる方が相手の気持ちやその状況を気遣うこともなく、襖をガラリと開けたり
無断で入ったりすることは決してありません。
部屋に入るときには、「失礼します」と言葉をかけるか、近づいてきたことを相手に知ってもらうために
『しわぶき』という軽い咳払いをしたりします。部屋にいる相手は人の気配を察知し、体制を整えたり、
話を中断することができるからです。こうしてみると、なぜ襖を三回に分けて開けるのか
という意味のわかってくるというものです。
日本人が考えだした襖という引き戸。日本の文化を語る建具の一つでもあります。
襖の開け方について、丁寧な方法から順に記してみましょう。
■真形(最もていねいな形)
まず開ける側の襖の中央に座り、引手に近い方の手を掛けます。
そして少しだけ(3〜5センチ程度)襖を開けます。それが、これから中に入りますよ、の合図となります。
入る人にはまだ部屋の様子は分かりません。
次に、その手を引き手側の枠に沿って、引手より30センチぐらい下ろし、そのまま身体の中央まで開けます。
ここまで開けた段階では、まだ中にいる人には、身体の半分が見えるだけで、目と目が合うところ
までには至りません。 ここで手を替えて、下から15センチくらいのところを持って開けます。
ただし、全部あけないで、襖の枠二つ分くらいを残します。これだけの段階を踏めば、
入る人も中にいる人も心の準備が整います。
■襖の閉め方・真形
中央に座り、枠に近い方の手で下から15cmくらいのところを逆手で持ちます。 | その手で中央まで閉めます。 | |
手を替えて引手より30cmくらい下を持ちます。 | 少し残すところまで引きます。 | その手を引手にかけ閉めます。 |
■襖の開け方・行形
襖の中央で開口(建付)に向かってきざになり、手を引手にかけて少しだけ開けま す。 | その手を枠に沿って引手より40cmくらいおろします。(襖の枠2本分残して) | そのまま楽に体が通るくらい開けます。 |
■襖の閉め方・行形
開口(建付)に向かってきざになり、持ちやすい位置(下から25cm)を逆手で 持ちます。 | そのままひざ頭まで引きます。 | 同じ手を引手にかけて閉めます。 |
草形
現在では、立ったままで襖の開閉をすることが許されています。特に和室にじゅうたんが敷いてあるような
部屋では、立って開け閉めした方が、合理的でむしろ自然な感じさえします。こうした意識が現代でも
通用するかというと、少し難しいようにも思えます。要は、慎みのある動作を心掛ければ、
何も三回に分けて開けるという形を取らなくてもかまいません。互いの信頼関係を損なうことの
ないような現代的作法を考え行動してもよいと思います。
お家で、お茶会で、恋人の実家で、襖の開閉がきちんとできるだけでも
「美人のオーラ」はアップしますよ!