|
駅前からもう弘法さぁーん |
「弘法さん」と言えば、あの弘法大師「空海」のこと。 京都の人は親しみを込めて「弘法さん」と呼びます。 794年に東寺と西寺が建立され(西寺は早くに衰退)、 空海が真言密教の道場として基礎を固め、 中世近世を通して勢力を維持してきました。 大師の信仰は厚く、広く民衆をひきつけ大師の住坊を 再建したと言われる東寺西院御影堂(みえいどう)には、 月の21日(大師の忌日)に大勢の信者が参拝にやって来ます。 この人々を当て込んだ露天市が、「弘法さん」の始まりです。 |
のどかにご詠歌がながれる♪ |
室町時代の初期、参拝人を相手に茶を売る商人がでてきます。 東寺が「一服一銭」の茶を商うことを認めた 特別のお店、これが今の喫茶店とも。 山門のすぐ右手で、コーヒーの香りが にわかテントの影からしてきます。 それを横目に「さぁ-どの古着屋から行こう?」 でも、ほこりの舞う炎天下では、 のどが思いっきり乾きます。 透き通った氷の上にきれいに並べられたラムネについ手が・・・ うーん、昔のラムネのほうがもっとキュウーッとしてたような。 |
因縁があるようでなさそうで・・・ガラクタをひっくり返したような雑踏をかき分け、 テントの下にやっと辿りつけました。 門前一帯から境内に、ところ狭しと1,000軒も! 植木、骨董、古道具、日用雑貨、古切手、漢方薬、タコ焼きなどなど。 青空の下で見る仏像や、鎧、刀、茶道具などはいつもより親しげで、 つい手に取りたくなります。 |
どこに置く?この香しい「瀬戸焼き」の便器!! |
中に炭を入れ熱くして使うそれにしても重い |
手のひらでチャンと動く、 ロンドン製のミシン |
こんなんむかし集めてた! |
だれが・・・着はります? |
「一見さん」いらっしゃーい! |
マジメに店番やらな~。 大木の下で涼しげに読書にいそしむ店のおじいさん。 ほら、お客さんが来てるよ。 「なんでも書いたぁる江戸時代の辞書や」 |
のどが乾く、お腹がへる・・・。 山門に戻って、喫茶店のそばの「品川亭」に立つと、 「おはいりやーす」とおじさんの声。 「なにしまひょ?暑い時に熱いもんを 食べんのが美味しいのやでぇ」 |
敬老パスを紐で首からぶら下げているおじいさんや、おばあさんならもう「弘法さん」のお得いさん。 「ハウ・マッチ?」の外人さんや、旅行かばんを持った観光客など・・・初めて醤油とカルメラの甘い香りの中を歩く人達。 「おじさん、これなんぼ?」 「もっと、安したげーな」 「しゃーないな」 みんなが私になって買い物の応援をしてくれます。 |
「昔はもっとすごかったえ」大正末期ごろには、朝市として大きな魅力を放っていましたが、時代が移るにつれ物の質は落ちていくようで 「このごろは全く何にも出んようになった」と店の人がよく言います。 品薄になった今、値打ち物をさがしだすのは、かえって素人の私達かもしれません。 昔をしらない私にとっては、今の「弘法さん」も充分楽しく、お店の人とこんなに話せたのが嬉しくて、すっかりファンになってしまいました。 月に一度仏壇のお線香とろうそくを求めてやってくるおばあさん、こうやって歩いてこれるのが嬉しい人、弘法さんで顔なじみになった人との再会を喜びあう人、 年輪を経て世を渡ってきた庶民の心と物が交錯する「弘法さん」は、まさに「生きる」ことを確認する場といえるでしょう。 |