『「ゆっくりしていかはったらよろしやないの、今おいしいお茶いれまっさかいに。
新幹線なんか待たしといたらよ ろしいがな」といいながら、後ろにさかさぼうきが
立っている。これが最初のサントリーのお茶のコマーシャルです。』
これは市田ひろみさんが出演されていたコマーシャルの事です。
『わたしはACC全日本CMフェスティバル特別賞タレント賞をいただき、
たいへんにうれしく思っておりました。』
『長居をするお客とか、ご飯時分になっても帰らない客がいるときに、さかさぼうきを
立てるというお茶目なおまじないは、それこそ日本中にありました。それが太平洋戦争のときの
ごたごたで忘れられてしまった。戦後はガムシャラに働き、忙しい毎日の中で、
そんなユニー クな慣わしはすっかり消えてしまったのでしょう。 』
そんな慣わしが今の京の都には残り、京都をテーマにしたCMに起用されたという事実が、
物事をはっきり率直に言わない京都人の性質をも表していると言えるかもしれません。
本当は、自分の思いを角の立たない方法でさりげなく表現しているのです。
逆さまになったほうきは普通に立てかけてあるそれよりも、威厳があって迫るような迫力があるように
見えてくるのは気のせいでしょうか。
このおまじないを知ってしまったら、よそのお家にあがっていてさかさぼうきを見つけた時に
ドキッとしてしまいそうですね。もう一度あのコマーシャルを見てみたくなります。
おまじない用にほうきをお家に一本、掃除機の隣にいかがです?
市田ひろみ著「京の底力」 ネスコ文芸春秋より