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小野小町の足跡を訪ねて

花の色は移りにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせし間に

絶世の美女と謳われ、六歌仙の一人として艶麗な歌を残した小野小町。
深草の少将をはじめ多くの貴公子達からの求愛にもなびかず、
宮仕えを辞した後は全国各地を渡り歩き、衰えた美を嘆きつつ亡くなったという・・・。

毎年3月最終日曜日には小町の邸宅跡と伝わる随心院で小町に扮した少女達が舞う
「はねず踊り」が行われる。遅咲きのはねず梅が咲き、桜のつぼみもほころぶ春の初め、
全国各地に伝説を残す歌人小野小町の京都での足跡を追い、その謎に迫ってみた。
 

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小野小町めぐりコース
 


クリックすると拡大地図になります。 
地下鉄東西線小野駅
  ↓(徒歩5分)
随心院
  ↓(徒歩5分)
小野駅
  ↓(東西線10分)
京阪三条駅
  ↓(京阪5分)
京阪・叡電出町柳駅
  ↓(叡電20分)
叡電市原駅
  ↓(徒歩3分)
補陀洛寺(小町寺)
  ↓(徒歩10分)
市原駅
  ↓(叡電15分)
出町柳駅
  ↓(京阪電車20分)
京阪東福寺駅
  ↓(徒歩2分)
東福寺塔頭退耕庵
  ↓(徒歩2分)
 

東福寺駅
  ↓(京阪電車8分)
京阪墨染駅
  ↓(徒歩5分)
欣浄寺
  ↓(徒歩5分)
墨染駅
  ↓(京阪電車15分)
京阪三条駅
  ↓(東西線2分)
京都市役所前駅
  ↓(徒歩5分)
菊野大明神
  ↓(徒歩5分)
京都市役所前バス停
  ↓(市バス20分)
堀川今出川バス停
  ↓(徒歩7分)
小町通石碑
  ↓(徒歩2分)
一条戻り橋バス停

 

随心院(ずいしんいん)~小町の邸宅跡・卒塔婆小町像・文塚・小町化粧の井戸・文張地蔵・はねず踊り~

絶世の美女・小野小町をめぐる旅は地下鉄東西線小野駅からスタート。
古来、小野の地は小野一族が住み、小町の邸宅も随心院の辺りにあったとされる。
駅から東へ徒歩5分。駐車場を抜けた所に、「史跡 小町御苑」という石碑が。
少し入ると萱葺の屋根の下に年代ものの直径1mほどの木の幹が横たわっている。
説明板によると、深草少将の百夜通いの折に小野小町が日数を榧(かや)の実で数えていた。
ところが、九十九個目の榧の実を手にしたまま、少将は死んでしまった。
小町は後に供養のため、榧の実を小野の里に蒔いたという。
この幹が成長した榧の木の三代目だというが・・・。

次に小町が恋文を埋めたという文塚へ向かう。
本堂裏の竹やぶの中にある五つの球体を重ねたユニークな形の石塔が文塚。
深草少将をはじめ、多くの貴公子からの千通の恋文が埋めてあるという。
積み重なって倒れそうな石の玉がうず高く積まれた恋文を彷彿させて面白い。

梅園を横手に見ながら、いよいよ随心院の中へ。
遅咲きのはねず梅は3月半ばの取材時にはまだ咲き始めだった。
途中絵馬堂には「小野小町のように美しくなれますように」などと乙女の願いが書き記された絵馬が沢山奉納されていた。受付にはあぶら取り紙(¥300-)レターセット(¥550-)など、沢山の小町グッズが売られていて目移りしてしまう。私は梅の柄で扉に小野小町の絵と和歌が書いてある御朱印帳(¥700-)をget。小町グッズはホームページでも販売されているので興味のある方はどうぞ。本堂には小町に寄せられた恋文を下貼りにして作られたという「小町文張地蔵尊」小町の晩年の姿を写したという「卒塔婆小町像」が安置されている。
卒塔婆小町は今回のコースでも小町寺と退耕庵でも見られたが、最もふくよかで、「いけずなおばちゃん風」の像である。文張地蔵は何の変哲もないお地蔵さんに見えたが、本当に恋文が貼ってあるとしたら文塚の恋文と合わせたらいったい何通になるのかな?
と考え込んでしまった。

書院には三十六歌仙の小野小町画像があった。
考えてみれば、今回のツアーの唯一の美しい小町像だった。
これから老衰小町像ばかり見ることになるので目の保養をしておこう。
隣には少将来訪の日を数えたという糸を通す穴のあいた榧の実が残っていた。

再び境内に出て百人一首の「花の色は・・・」の歌碑を見学。後ろ向きの小町像が印象的。
出口附近にある「小町化粧井戸」の辺りに丁度小町の邸宅があったそうだ。
石組みで囲まれた深い井戸には今なお澄んだ水が湛えられている。
江戸時代の『都名所図会』にも小町が朝夕化粧をこらした井戸として紹介されている。
門を出てすぐの天田川にかかる橋は、化粧の井戸から流れる化粧水にちなんで
化粧橋といわれている。

毎年3月の最終日曜日には、小野小町と深草少将に扮した少女達が舞う「はねず踊り」が行われる。遅咲きのはねず梅の見頃と重なる優美な祭。是非一度見学してみたい。

→小町ゆかりの遺跡や仏像も見られる随心院さんのホームページはこちら

今 年のはねず踊りレポートはこちら

住所:山科区小野御霊町
拝観時間:9:00~16:30
拝観料:300円

小町が恋文を埋めた文塚

小町化粧井戸には今でも水が

卒塔婆小町像(向かって左)
小町文張り地蔵(右)

小町に扮した少女が舞う
はねず踊りは3月25日開催。

★食べる★そば処 萬寿亭 橘(そばどころまんじゅていたちばな)~随心院のそばのそばや~

随心院の門を出て左手に蔵を改造したような店が立っていた。
はためくのれんに誘われるように入ってみると、「萬寿亭橘」というお蕎麦屋さんだった。
江戸時代の寺侍の屋敷を改造したという店内には伏見人形やいろりがあって、とても古風な感じ。

メニューの中でひときわ目を引いたのが「ダイエット定食」。(¥950-)
どんなヘルシーメニューが出てくるのか期待していたところ、大きなどんぶりに入った木の丼と小鉢と香の物が運ばれてきた。
えええ!これじゃダイエットにならないよ!と驚いていると、更に大きなお椀に入ったお蕎麦も出てきた。
さすがお蕎麦屋さんだけあって蕎麦は腰があって、おつゆはダシが効いていてとても美味しい。木の葉丼もボリューム満点だ。「随心院のそばのそばや」と銘打ったボリューム満点のお蕎麦屋さん。この際、ダイエットは抜きにして食事を楽しもう!

住所:山科区小野随心院門前
TEL:075-572-7001
営業時間:11:00~15:00
定休日:木曜日・第三金曜日・1/1~7

萬寿亭橘の古風な外観

ダイエットできない!?
ダイエット定食¥950ー

小町寺・補陀洛寺(こまちでら・ふだらくじ)~小野小町・深草少将供養塔・姿見の井戸・小町老衰像~

叡電鞍馬線の市原駅で下車するとそこは鞍馬に続く山中の道。
南へ少し行くと小町寺という看板と急な石段がある。これを登りきったところにあるのが補陀洛寺
別名「小町寺」という。

小野小町は晩年、流浪の果てにここに辿り着き、「吾死なば焼くな埋むな野に晒せ 痩せたる犬の腹肥やせ」との壮絶な歌を残して悲しい最期を遂げたという。野ざらしになっていた小町の菩提を恵心僧都が弔ったという。
何とも残酷な話だ。比較的新しい本堂の中には、本尊の阿弥陀如来像と共に、小町老衰像と言われる法体の老婆像が安置されている。
骨と皮ばかりの体、落ち窪んだ目に皺だらけの顔・・・。
かつて絶世の美女と謳われた小町の面影は全くない。
何とも言えない無常観だけが漂っていた・・・。

境内には深草少将の供養塔(宝篋院塔)と、更に石段を登った奥には小野小町の墓と伝わる五重の石塔が間を置いて建てられている。
其の距離が生前のふたりの距離を表しているようで切ない。
ここまで深草の少将が通ってきたとは考え難いのにしっかり残る供養塔。
人々の少将に寄せる哀れみの情が感じられた。

小町の墓の反対側には「小町姿見の井戸」があった。
随心院のものよりも小さいが、この古びた井戸に小町は老いて醜くなった自分の姿を映しては嘆いたのかと思うと、哀愁が漂ってくる。

住所:左京区静市市原町
境内自由

小町老衰像。
変わり果てた小町

深草少将供養塔(前)
と小野小町の墓(奥)

退耕庵(たいこうあん)~小町玉章地蔵・小野小町百歳井戸~

東福寺駅を降りて南へ5分。北大門を入って東へ行くと程なく東福寺塔頭退耕庵に辿り着く。
入り口には「小野小町遺跡」と流麗な文字が彫られた石碑がある。
期待に胸を膨らませて門をくぐると、「小野小町百歳の井戸」という石碑と
さほど古くはなさそうな井戸が目に入った。
ここにも後の世に作られた小町が老いた我が身を写して嘆いたという井戸があった。

横の「小町堂」には2mもある彩色の地蔵が。
これが「小町玉章地蔵」で老いた小町が若かりし日にもらった恋文を貼り重ねて作ったと言われている。
随心院にも同じ由来を持った「文貼り地蔵」があったが、退耕庵の地蔵の方が、
大きくてよりリアルである。堂の端に安置されているのは
浮き出た肋骨と皺の刻まれた顔から想像するに「小野小町百歳の像」だろう。

帰り際、近くの公園に早くも桜が咲いていた。舞い散る花びらに、
花の色は移りにけりないたづらに 我が身世に降るながめせしまにの小町の歌を思い出した。
美しい桜の花の命は短い。小町の花の盛りも短く、100歳まで生きさせたのは運命のいたずらか?
美しい小町の像は少なくて、老いさらばえてからの像や伝説の方が多く残っているのも残酷なものだ。

住所:東山区本町東福寺塔頭退耕庵内
拝観時間:9:00~16:00
拝観料:無料

小野小町百歳井戸

玉章地蔵と小町百歳像が
安置されている小町堂。

欣浄寺(ごんじょうじ)~深草少将邸宅跡・少将・小町供養塔・少将遺愛の井戸・小町姿見の池~

京阪墨染駅から西へ約5分。深草の少将の邸宅跡と伝えられる欣浄寺に辿り着く。
ここから少将は小町の住む小野への百夜通いを続けたという。
以前は背後の竹やぶの中に「少将の通い路」が残っていたそう。

萱葺の門の隣には通ふ深草百夜の情 小町恋しい涙の水が 今も湧きます 欣浄寺
という小町を思う少将の気持ちが伝わってくる歌を書いた立て札が。
門を入るとなみなみと水を湛える大きな池が。横には深草少将遺愛の井戸がある。
井戸からは小町を恋うる少将の涙の水とも言われ、今なおこんこんと涌きだしている。

奥には深草少将と小野小町の供養塔と伝わる比較的新しい石塔が、仲良く並んで立っている。昔の写 真には古い石塔が写っていたのでこれは2代目だろうか?
小町寺では離れて立っていた二人の供養塔が、欣浄寺では仲良く寄り添って立っている。深草の少将の邸宅跡の寺なので主人の願いを叶えてあげたのだろうか。
生前は結ばれなかった二人だが、死後はこの塚のように仲良く寄り添っていてほしい・・・。せめてもの願いだ。

又、欣浄寺には「伏見大仏さん」と呼ばれる丈六の大仏が安置されている。
予約すると拝観できるそうなので、興味のある方は電話してみよう。
桜の季節には藤原基経が亡くなった時に喪服と同じ墨染色の花を咲かせたという
「墨染桜」(現在は三代目)を見ることもできる。伏見の隠れた名所といえる見所の多い寺だ。

住所:伏見区墨染西枡屋町
TEL:075-642-2147
本堂拝観時間:10:00~16:00
境内自由

小町供養塔(向かって左)
深草少将供養塔(右)

井戸からは「少将涙の水」が
今なお涌きだしているという。

菊野大明神(きくのだいみょうじん)~深草少将腰掛の石~

地下鉄東西線市役所前駅で下車し、河原町通りを北へ5分ほど行くと法雲寺という寺に辿り着く。ここにあるのが菊野大明神。ご神体は百夜通いの時に深草少将が腰掛けたと言われる石だ。

庭を通って「菊野大明神のお参りはこちら」と書かれた家の玄関をくぐり、ここで拝観料100円を箱に入れ、ローソクとお線香をいただく。
扉を開けると奥庭に出る。更に奥に進むと薄暗い祠があって、ここが菊野大明神
形は見えないが、中に祀られているのが深草少将腰掛石だという。
真偽の程は定かではないが、小町の元に熱心に通った少将ゆかりの石が縁切のご神体となっているのが面白い。
報われない恋はとっとと断ち切ってしまった方がいいということだろうか?
京都の人は婚礼の際には決して菊野大明神の前は通らないそうだ。

住所:中京区河原町通二条上ル
拝観時間:9:00~17:00
拝観料:無料(ローソク・線香代:100円)

ご神体が深草の少将腰掛石だという
菊野大明神。縁切りの神様だ。

小町通石碑(こまちどおりせきひ)~小町草紙洗遺跡~

市役所前バス停から市バス59号系統に乗り、約20分。
堀川今出川バス停で降りる。南に4筋下がり、安倍晴明ゆかりの一条戻り橋を渡り、東へ一筋。南北に伸びる細い道を小町通という。
北西角には「小町通・小野小町雙紙洗水遺跡」と彫られた小さな石碑が建っている。雙紙洗い水とは何か?

かつてこの地にあった邸宅で大伴黒主と小野小町の歌合せが行われた。
共に六歌仙と評された歌の名手だったが、黒主は小町の評判がよい事に嫉妬し、小町が歌を記した草紙に手を加え、『万葉集』を盗作したように見せかけた。
しかし小町は計略を見抜き、庭先の井戸の水で草紙を洗うと、後から黒主が書き足した箇所が洗い流されて難を逃れたという。
小町が草紙を洗った井戸がこの辺りというので、「小町通」と名づけられた。
小町の冷静さを称えるエピソードの真偽は定かではないが、この話は謡曲にもなり、江戸時代にはこの近くに小町塔が、昭和初期までは井戸も残っていたという。

才たけた美女だった小野小町。その伝説に彩られた人生は未だ謎のままだ。
謎の美女ゆかりの小町通がこれまた謎の陰陽師安倍晴明ゆかりの一条戻橋の近くにあるのも不思議な縁のような気がする。謎の美女の影を偲びつつ、一条戻橋のバス停へ向かった。

住所:上京区堀川通一条東入ル

小野小町雙紙洗水遺跡記された小町通りの石碑
絶世の美女と謳われた小野小町ゆかりの史蹟は京都に点在している。しかし、美しい面影を偲ぶものは殆ど見られず、老いさらばえた像や、老いた我が身を写しては嘆いた井戸、あまたの恋文を貼り付けた地蔵ばかりが残る。そして小町の史蹟の傍らには彼女を愛して百夜通いを続け、九十九日目に思いを遂げることなく亡くなった深草の少将ゆかりの史蹟も残っている。少将に対する愛惜の思いと、小町の驕慢さに対する非難の思いが渦巻いているようで心苦しいばかりだ。優れた歌を残した才たけた美女。小町の優美な面影は、花の色の移ろいと共に散ってしまったのだろうか?

(さんぽ/渡辺 芭雨)

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※このページの掲載情報は、取材時のものであり、現在のもの、歴史上の事実とは異なる場合がございますので、ご了承下さい。参考としてご覧頂きますようお願い申し上げます。

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