レトロな京福電車に揺られて嵐山駅で下車。 渡月橋の北詰めに琴の名手・小督ゆかりの琴聴橋があると聞いて訪ねてみた。 「橋」というからには川にかかっているものだろうと探してみても 目の前の大堰川にかかるは最近工事して橋桁が新しくなった渡月橋のみ。 ふと人力車がたむろしている道の横を見やると、赤い玉垣の車折神社嵐山頓宮が見えた。 頓宮の前には小さな石の橋がかかっており(川はない)「琴聴き橋」と彫られた欄干が。隣には「平家物語」巻六「小督」の章が記した説明板もあった。 小督は中宮徳子(清盛の娘)に仕えた女房で、宮中一の美女と謳われた琴の名手。徳子は高倉天皇を慰めようと小督を参内させるが、天皇は小督に夢中になってしまう。しかも小督には藤原隆房(清盛の五女の婿)というもうひとりの恋人がいた。娘の婿を2人までも奪った小督に清盛は怒り狂い「殺す!」とまで言い出す。自分の身はさておき、帝に迷惑がかかることを案じた小督は密かに宮中を抜け出し、嵯峨野に身を隠す。 高倉天皇の命を受け、行方不明になった小督を探していた側近の源仲国は月の綺麗な晩、亀山辺りを通りかかると、たえなる琴の調べが。 「想夫恋」だ。笛の名手で小督と合奏したこともあった仲国は、すぐに小督の琴の音とわかった。 仲国は急いで宮中へ戻り、天皇へ小督の居場所を報告する。 小督は天皇の命で密かに御所に連れ戻された。 そして、以前以上の寵愛を受け、天皇との間に女の子が産まれた。 仲国が小督の琴の音を聞いた小橋は「仲国駒止めの橋」と言われた。 明治に入ってから小督を偲んで渡月橋北詰めのこの地に「琴聴橋」が作られた。 人気の「桜餅本舗」と客引きが激しい人力車の停車場に挟まれて「琴聴橋」は ひっそりとただずんでいる。まるで嵯峨野に隠れ住んだ小督のように・・・。 住所:右京区嵐山渡月橋北西 車折神社嵐山頓宮前 |
車折神社嵐山頓宮前にかかる琴聴橋 |
小督の琴の音を聞いて天皇側近の 仲国に見つけ出されたという。 |