昭和25年7月2日未明、国宝であった金閣は鹿苑寺の徒弟の放火によって炎上、焼失しました。
犯人はその動機を「金閣寺の美しさに嫉妬した」と語っていたそうです。
この金閣寺の放火事件をモチーフにしている事で、よく比較される2つの小説。
事件の6年後に書いた三島由紀夫はこの犯人の青年僧を語り口に、
その異常な精神状態を華麗な文体で綴りながら「美」とは何かを追求し、
一方で水上勉は、青年僧と同郷で境遇が似ており、
顔見知りでもあった彼への鎮魂の思いを作中に滲ませています。
放火事件が起こった当時の住職は、再建勧進のため托鉢行に出ました。
それに対し多くの人が浄財を納めたといいます。新しい金閣は昭和30年に完成し、
その後も度々修復され、焼失前のものより創建時の姿に近くなったといいます。
他に金閣寺が登場する小説には大佛次郎(おおらぎじろう)の「帰郷」があり、
北原白秋は金閣寺庭園を「金閣寺み冬さむけくふる雨あしの池の上にして」と詠っています。