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宇治特集 萬福寺と塔頭めぐり

- 中華様式を色濃く残し、煎茶文化を継承する黄檗宗の大本山 - 

<京都駅から萬福寺へのアクセス>

JR奈良線黄檗駅・京阪電鉄宇治線黄檗駅を下車、徒歩5分。
京都駅からはJRで約30分です。

萬福寺について

臨済宗から独立した黄檗宗の大本山で、中国の隠元大師が江戸時代に建立しました。
中国の福建省にある黄檗山萬福寺がその名の由来で、明時代の禅文化の影響が多くみられ、京都のお寺の中でもひときわユニークな存在感を放っています。
隠元禅師、木庵禅師、即非禅師など中国の名僧ゆかりのお寺で、数は減ったものの、今でも19の塔頭があり、今回は萬福寺とその一部の塔頭にお邪魔してきました。

■お問合せ:0774-32-3900
■黄檗山萬福寺公式HP

宇治十帖を巡るコース

宇治十帖を巡るコースでもお世話になった宇治観光ボランティアガイドクラブの会員さんに、今回も案内して頂きました。

宇治観光ボランティアガイドクラブ(電話:0774-22-5083)
e-kyotoスタッフのイチオシ!
実はこの特集をリニューアルするにあたり、今回はボランティアガイドさんと二人三脚で取材して参りました! 4時間ガイド付きで案内して頂いてたったの1000円。英語案内も依頼できます。地図を片手に迷う事も、時間配分も気にする事なく、充実した観光を楽しむ事ができます!

宝蔵院

宇治 宝蔵院京都府宇治市五之庄
電話:0774-31-8026

 

宇治  宝蔵院重要文化財である一切経の版木が約6万本も保存されているというお寺。
一切経とは、仏教思想の精神面のみならず、天文や医術、薬学・人道等の面からも説き明らかにした、いわば「仏教百科辞典」です。
これを江戸時代に鉄眼(てつげん)和尚が17年をかけて日本で始めて刊行しました。

現在も摺り師が刷っており、萬福寺の印刷所、とも例えられるでしょうか。

お寺の奥にそびえ立つ大きな収蔵庫。門の外からでも見えます。
ここの奥様に開けて頂きました。

宇治  宝蔵院 院内階段を上ったところで、一瞬言葉を失いました。
3階に渡って、おびただしい数の版木が整然と並んでいるのです。

ここがお寺の敷地内だという事を忘れてしまいそうです。

ガイドさん:「この6万本のうち4万本が重要文化財に指定されています。全て吉野桜の木なんですよ」

廃仏毀釈や戦争等の影響で、何度となく寺院の移動を余儀なくされたにも関わらず、これだけの版木を現在も完全な形で保存されているのが素晴らしい。

宇治 宝蔵院 資料 宇治 宝蔵院 資料
宇治 宝蔵院 資料

と、その時一人の刷り師さんが出勤して来られ、案内しながら色々と詳細に(むしろマニアック)説明して下さり、ガイドさんと共に聞き入りました。

この一大事業が行われた江戸期は、浪人となった侍たちが多く、彼らが刷り師となって生計を立てていたとか。

刷られたものが干してありました。「よろい干し」というそうです。

黄檗(きはだ)色の紙。キハダには防虫効果もあるとか。
20文字が20列、つまり400文字。これが原稿用紙のルーツなのです。
ここの版木に彫られている書体は明朝体。これも私達が普段慣れ親しんでいる書体の発端なのです。
宇治 宝蔵院 資料 宇治 宝蔵院 資料

宇治 宝蔵院 資料最上階には、鉄眼和尚や韋駄天像が祀られていました。
韋駄天は足の速い神様。「韋駄天走り」の言葉の由来です。
頭に鳩の飾りが付いているのが珍しいそうです。
印刷技術によって仏の教えがより早く、広く伝わっていくように、との願いでしょうか。
この韋駄天さまは、各本の奥付にあたる版木にも彫られています。
これが無くては表に出す事ができないそう。

祭壇には「鳥居信治郎」と刻まれた位牌もありました。
この大きな収蔵庫は、サントリーの創業者・鳥居信治郎氏によって建てられたのだそうです。

映画「鉄眼」というポスターも発見!こんな映画があったんですか…。

宇治 宝蔵院 資料版木の韋駄天像といい、画数の多い漢字まで精密に彫ってしまう彫り師さんの技術に思わず感嘆を漏らさずにはいられません。

宇治 宝蔵院 資料「昔に版木を彫った人が、落書きの様なものを残していたりするんですよ。依頼された仕事が大変で「難儀、難儀」って彫ってあったりしてね」
「刷る時の台・杉板は向こうに下がっているんですよ。この上にヤワラという滑り止めを敷いて…」

この刷り師さんはこの道31年!薄暗く狭い空間でひたすら何百枚というお経を刷り続けているなんて、仕事に対する誇りと好きという気持ちがなければできない事です。

刷り損じも、一日に1枚あるかないかぐらいの正確さ。

宝蔵院には、会社の研修や美大生が見学に来る事があるそうですが、観光客にはまだ広く知られていません。
観光寺院の様な華やかさはありませんが、一枚一枚と陰ながら積み重ねられた歴史の重みを体験する事ができます。
宝蔵院へは、萬福寺前の道をまっすぐ歩くとすぐに辿り着ける事ができます。
ちょっと立ち寄って、ひとときの異世界を体験してみてはいかがでしょうか。

萬松院(ばんしょういん)

宝蔵院と萬福寺の間、同じ道路沿いにあります。
ここで、60面あるという「元日本南画院会長故直原玉青師」の襖絵を見せて頂く予定でしたが、
取材当日は住職さんが不在のため見学は叶いませんでした。残念!

宇治 萬松院 宇治 萬松院
宇治 萬松院

駒の蹄影之碑

宇治 駒の蹄影之碑萬福寺の門を潜る前に、後ろの大きな石碑にご注目。
ここが宇治茶発祥の地である事を示しています。

なぜこんな名前が付いているのかと言うと、栄西禅師からお茶の種を譲り受け、それを宇治に伝えたという明恵上人が馬をこの辺りの土の上に歩かせ、交互についた蹄の跡に茶の種を撒けばいい、と指導したのだそうです。


 

宇治 駒の蹄影之碑ガイドさん:「まっすぐ一直線ではなく、ジグザグの位置で育てる方法は、今でも宇治茶の木の栽培に受け継がれているそうですよ」

石碑に向かって右にはお茶の木が植えられており、お茶の実を初めて見ました。

ガイドさん:かつてこの辺りは一面の茶畑で、その広さは三室戸寺辺りまで続いていたといいます」

萬福寺

総門

宇治 萬福寺 総門入り口からなんとも中国風!
取材当時は、晋山式(新たに任命された住職がお寺に入る儀式)が近いため、飾り付けがしてありました。

さて、まだ総門を潜ってはいけません。門の上に載っている不思議な生き物をご覧あれ。
これはシャチホコではなく「摩加羅」といい、ガンジス川の女神が乗る架空の生き物なのだそうです。

宇治 萬福寺おっと、まだまだ総門を潜ってはいけません!掛かっている扁額も見ておきましょう。
「第一義」と書かれていますね。
ガイドさん:「ここで学ぶ者は、何ものにもとらわれないように、という意味なんです。」

門の敷居を跨ごうとしたところで、
ガイドさん:「何故、敷居が高いのか分かりますか?」
昔はお寺の周辺で豚を飼っているところが多く、その豚の進入を防ぐためなのだとか。

確かに短い豚足では跨げない!!

やっと門を潜ったところで、再び振り返りましょう。
萬福寺の境内は、聖獣・龍の姿を表しているといいます。
ガイドさん:「先程の駒の蹄影之碑の両側にあった井戸が龍の目、その間に生えている松が髭、碑の向こうにある堀が口なんです」


門の裏側に白い円相が描かれています。
ガイドさん:「風水的モチーフの一つ、「白虎鏡」で、「平等」を意味し、大丸百貨店のマークの由来となっています。」
なんと!こんなところでデパートの話題が浮上するとは。

ガイドさん:「大丸の「大」は人を表し、「全ての人が等しく豊かになり、商売繁盛」の思いが込められているそうです。
大丸百貨店(大丸呉服店)は、萬福寺にお布施をしていました。それが、商売が行き詰まった時に融資をやめたいとお寺に申し出たところ、時の和尚が“分かりました。では丸を返して下さい”と言われたそうです」
なんと…。萬福寺は二、三度お参りしていますが、こんなエピソードを聞いたのは初めてでした。

宇治 萬福寺 地図地図で黄檗山内を一望。

ガイドさん:「萬福寺の頂上には、華僑のお墓があるんですよ」

一言コラム

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